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浅草 仲見世の裏通りの話

忘れられない思い出の光景と味

私が小学校1~2年生ころ、仲見世の裏通りに老舗のべっ甲屋がありました。ガラス越しにべっ甲の職人さんが作ったべっ甲の櫛やかんざし、帯留などいろいろなものが展示してあり、それを眺めるのがとても好きでした。
まだ背が低くて出窓のようなガラスのショーケースの中がよく見えないので、両手をかけてつま先立ちをして中をのぞいていたのを憶えています。

透かし彫りやいろいろな技巧が施されている素晴らしい作品がたくさんあって、「すごいな~」と仲見世に行った時は必ずのぞいていたのです。行くたびにいつも新しい作品が並べてあり、「いったいどんな人が作っているのだろう?」と思うのでした。

その通りにはいろいろなお店があって、舞台で使うようなかつらやつけ髭なども売られていましたし、観音様の裏の方には骨とう品店が何軒かあって、ウインドーに飾られている刀を見に行ったり、また仲見世通りに戻ってみたり、ぶらぶらとあっちこっち眺めて歩くのが好きでした。
今思うと、「子供の頃に本当に良いものをいっぱい見て育っていたんだなあ」と思います。
私が職人を目指した一番最初のきっかけは、もしかしたらこの仲見世通りにあるのかもしれません。

ある時いつものように仲見世通りを歩いていると人形焼きのお店があって、いい匂いにつられて吸い寄せられ、じっと眺めていたら「食べるか?」とお店のひとにタダで貰ったこともあります。
きっと物欲しそうにしている私をみてお店の人がくれたのだと思います。
当時の「人形焼き」は1個1個手焼きで、カリカリしていてあんこは甘く本当に最高の味でした。

街も人も温かく、忘れられない人形焼きの思い出です。

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