銭湯は冬の社交場
「冬の楽しみ」
小学生のころ、冬場寒くなると遊ぶところないし、行くところもないので、近所の友達と午後3時から開いている銭湯に集まるのが、恒例のようになっていました。
銭湯は冷たい風もふかずのんびりあったまれるので最高の場所でした。当時の銭湯代は子供の小遣いでも入れるような安価なものでした。
今思い出すと、5月の菖蒲湯とか冬至の柚子湯の日には菖蒲の葉や柚がお湯にバラバラと盛大にまかれるのです。
そうすると、子供たちがいっせいにお湯に飛び込み、取り合いがはじまり、入浴中の近所のおっちゃんに「取るんじゃねえ!」怒られたものです。
菖蒲や柚をいっぱい取っても仕方ないとわかっていても、楽しくて悪ガキみんなでとりあったものです。
けれどもお湯に戻さないとただのお湯になってしまうし、怒られたくないのもあって、ひと遊びするとまたお湯の中に菖蒲や柚をお湯の中に戻し、お風呂の周りを駆けずりまわったりお湯に入ったり出たりしてあそんだものです。
また、銭湯の前に屋台のおでん屋があってお風呂帰りに、安い具材の大根とかジャガイモはよく食べました。
蛸の足を串で刺したものやバクダンと呼ばれるゆで卵が入ったものは高くて食べられませんでしたが、味の染みたアツアツ大根の味は忘れられません。
これも銭湯に行く楽しみの一つで、銭湯は当時の子どもたちの冬の社交場でした。
当時自分の家にお風呂のある所はまだ少なく、庶民の子である自分たちは、一大レジャーランドの気分になって楽しんだものです。
今のような娯楽はほとんどない時代だったので、楽しいことは自分で見つけるもんだ、と私は小さな時からいつも思っていました。