かんざしとの出会い
「機械加工の基礎を学んだアルバイト」
中学2年生の夏休みに山手線に乗って、親戚がやっていたかんざし工房にアルバイトに行くことになりました。
そのかんざし工房は主に花嫁かんざし(笄・こうがい)を製作する工房で、板状の材料を切ったり彫ったり蒸気で曲げたりして立体的なかんざしを作っていく工房でした。
私に与えられた仕事は、合成樹脂でできた直径3~4ミリほどの丸いリング状のくさりに使う部品を作るというものでした。
まず1ミリ厚さで180×90センチ幅の材料を出してきて、4センチ位の幅に「ひっかき」という道具で切断し、それを「けとばし」という、足で蹴って形が上下する機械にセットしてガシャンガシャンと足で踏んでリングの形に抜くという仕事でした。
夏休みは泊まり込みでアルバイトしていたので、朝から晩まで働いていたのですが、最初にやったかんざしのアルバイトの仕事はその「けとばし」でした。
夏休みが終わると自宅に戻り、日曜日の気が向いた時だけ10時~5時くらいまでアルバイトしていました。
前に書いたようにその当時は住まいが工場の敷地内にあったので、それぞれの工場から出るいろんなアルバイトもしていました。わたしが旋盤とかボール盤とかいろんな機械に詳しいのはそのときに様々な機械を使ったアルバイトをしていたためです。
普通卓上ボール盤は13ミリの大きさまでしか穴はあけられないのですが、下穴が20ミリの穴から35ミリというような大きな穴をベルトを回転させてあけるような機械もあって、そういういろんな機械を使った仕事もありました。
それは様々な機械を使って加工したり、いろんな技術を見たり聞いたりして機械加工の基礎を学んだ時期となり、後に螺鈿製品を創作するときに、黒檀のアクセサリー土台とかぐいのみの土台とかを自分でひいたり、自分でいろんな型を作ったりして製品化できたのは、その時の工場でのアルバイトで多くを学んだことが基礎になっていると思います。